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「ふざけないで!」
私が一喝すると、レオは少し悩む素振りを見せた。そして、一言。
「じゃあ……5万でいいよ」
「じゃあって何だよ! 誰が払うか!」
レオはいつもこんな感じだ。私がいくら叱ってもふざけている。
いや、5万と言ったときのレオの目はわりとマジだったな……。
「あんたね、そろそろ真面目にアイドルの仕事をしなさいよ。相方の春人やファンに悪いとは思わないの?」
「俺なりに一生懸命やってるけど。困るなあ〜、ちゃんと評価してくれないと」
評価するには実績がないとできないってことをこいつ、わかってんのか?
「せめて愛想良くしてよ。あんた、顔だけはいいんだからさ、笑顔でいたらファンが増えるかもよ?」
すると、レオは「わかってないなあ〜」と肩をすくめた。
「ファンはニコニコしてるアイドルらしい俺より、歌に期待してる奴の方が多いだろ」
「それは……否定できないけど」
そう、ハルレオの最大の売りは歌だ。二人が奏でる甘く絶妙なハーモニーは聴いている者を魅了する。
特にレオは低音から高音まで幅広い音域の持ち主で、歌唱力が高い。
しかし、レオのやる気のなさが原因で、いまいちハルレオの人気が出ないのであった。
「ハルレオの大半は春人君のファンだし、俺が多少さぼっ……ごほん! ミスをしてもお客さんは許してくれるはず」
「あんた今、さぼってって言いかけたでしょ」
「き、聞き間違いだろ……そんなことよりさ」
レオの言葉に眉をひそめた。
こいつは今、私の話を『そんなこと』で片付けたよな? ああ、どうしよう。無性にこいつを殴りたい……。
怒りで震える拳をなんとか抑えていると、レオは子犬のようにウルウルとした目を向けて、こう言った。
「お金ちょーだい♡」
「この……クズ野郎」
私は自分の額を手で押さえた。頭が痛い。
こいつの嫌なところは自分の顔の良さをわかっていて、フル活用してくることだ。
もし、アイドルとして売れても、こんなクズであることが世間にバレたら、ハルレオはおしまいだ。
「せめて貸してって言いなさいよ」
「俺が借りた金を返せるだろうか? いや、できない」
「嫌な反語の使い方をするな」
「ねえ、お願い。一生のお願いだから〜」
レオは手を合わせて私に頼み込む。
「あんたの一生のお願いは何回あるの? この前も同じようなことを言ってたけど」
すると、レオは私の腕をガシッと掴み、
「頼むよ、マネージャー! ゲームで欲しいアイテムがあるんだけど、今、金欠でさ!」
と、すがってきた。
こいつに男としてのプライドはないのか?
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