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「金欠なのはゲームのせいでしょ。そんなことにお金と時間を使うなんてバカな人間のすることよ」
「はああぁぁ? 俺から言わせたらゲームの楽しさを知らないなんて、人生損してると思うけど?」
まるでこっちが間違っているような言い草に、私はあきれる。
「課金のしすぎで破滅の道を突き進んでいる奴に、人生についてとやかく言われたくないんだけど。それにー」
私はそこまで言って、目を閉じる。
「ゲームをしたって何も残らないじゃない。未来の投資にもならないし。いい歳なんだから現実逃避はやめたら?」
そうだ。辞められるなら早いうちに辞めた方がいい。私はある経験からそのことを身に染みてわかっていた。
そのとき、レオがボソリと呟いた。
「……そんなかわいくないこと言うからマネージャーは結婚できねえんだよ」
「……は?」
片眉がピクリと跳ね上がる。
レオは小さな声で言ったつもりだろうが、はっきりと私の耳に届いている。
私はレオの胸ぐらを掴み、締め上げた。
そして、笑みを向け、問いかける。
「結婚が、何だって?」
「ひいっ……!」
こちらの殺意が伝わっているのか、レオは額に汗を浮かべ、ガタガタと震えている。
「ちょ、調子のってごめんなさい! だから、命だけは……!」
命乞いをしているレオに、私は微笑んだ。
「ふふふ、何で謝ってるの? 私がこんなことで腹を立てるわけないでしょ」
「……な、何だ。驚かせるなよ」
レオは先程の青ざめた表情から一転、ほっとしたような表情をした。
そんな彼に私は尋ねる。
「それで……遺言はその言葉でいいのね?」
笑顔でそう言った瞬間、サーッとレオの顔がまた青くなる。
「ぎゃあぁ! やっぱり怒ってるじゃねえか! というかマネージャー、目が暗殺者みたいだけど! アイドルに向ける目じゃない!」
「ふふふ、大丈夫。苦しみは最初だけだから……」
「何だよその言い方!? 怖すぎるだろ!」
「安心して。私はただあんたの息の根を止めたいだけだから」
「何一つ安心できねえよ!」
そのとき、事務所の扉が開いた。中に入ってきた人物を見たレオはパアッと顔を輝かせた。
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