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「ぐっ……、ぐるしい。マ、マネージャー、ギブだ! ギブ!」
私は冷めた目で、うめき声を上げているレオを眺めた。
こいつはダメだ。今日、殺そう。こんなクズを野放しにしていたら世の中のためにならない。
「……」
「無言はやめろよ! あと、その殺し屋みたいな冷たい目を俺に向けるなあぁ! さっきから怖いんだよ!」
泣きわめく情けないレオの姿に、私の殺意は深まるばかりだ。
「春人、こういう奴は1回痛い目に合わないとわからないんだよ」
「いや、でも暴力はさすがにダメだろ」
「さっきレオにお金をたかられたんだけど」
そう言うと、春人はじーっとレオを無表情で見つめた。
「え、何? 春人君、何で無言で俺のこと見てるの?」
「……レオは一度、マネージャーに殴られた方がいいな」
「ちょっ、見捨てるなよおぉ!」
もはや私だけでなく、春人ですらレオのクズっぷりに冷ややかな目線を投げかけていた。
「それにレオは未婚女性に言ってはいけない禁句を言ったの! だから……殺す!」
「ぎゃあぁ! ちょ、ちょっとまてよマネージャー! 暴力は何も生まねえぞ!」
レオは手を前に出し、薄っぺらいセリフを吐いた。
「うるさい! 私が結婚できないのは全部お前が悪いんだぁ! このクズアイドル!」
私はレオの首元を掴み、ガクガクと揺さぶった。
「ぐふっ……この人、どさくさに紛れて婚期が遅れてること俺のせいにしてんだけど!」
「婚期遅れてるって言うなあぁ! 殺すぞ!」
「いや、まさに今殺そうとしてるよね!?」
さらに私がレオに制裁を加えようしたとき、「グハッ!」とうめき声が聞こえた。
見ると、春人が床にうずくまっていた。
「春人、大丈夫!?」
そう呼び掛けたが、反応がない。
まさか、返事ができないほど、体調が悪いのか!?
春人に駆け寄ろうと、私はレオの首元から手を離した。
「へぶしっ!」
私が勢いよく手を離したので、レオは悲鳴を上げ、バタンッと床に倒れ込んだ。
そんなレオを一瞥した後、私は春人の方に向かって走った。
まあ、こいつは大丈夫だろう。
「扱いの差が酷いだろ! せめて声を掛けろよ!」
私は後ろから聞こえてくるレオの戯言をスルーした。
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