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「はあはあ……マネージャー」
春人に近づくと、頬を赤らめ、苦しそうに肩で息をしていた。
まずい。かなり体調が悪そうだ。救急車を呼んだ方がいいか!?
そう思い、スマホをポケットから取り出そうとすると、
「……すまない。我慢していたが、抑えられなかった」
そう聞いた瞬間、私はピタリと固まり、春人を凝視した。
「あんた……まさか」
私は顔を強張らせた。春人は厄介な病気を患っているのだ。
「……ああ。ゾクゾクしたぞ」
春人はうっとりとした表情で私を見つめ、ぎゅっと私の手を握った。
「殴るならレオじゃなくて、俺を殴ってくれ!」
私は自分の額を手で押さえ、もう一人の問題児にため息をついた。
真曽春人はドMという病気を患っているのだ。だから、私がレオを叱っていると、自分を代わりに殴ってほしいとか、蹴ってほしいとか言ってくる。
私にはそういう趣味はないから頼まれても困るんだけど。
「はあ……春人はその変態性がなければ完璧なのに」
春人はレオと違い、レッスンを真面目に受けているし、ファンへの対応も紳士的で問題ない。
ただ、ドMであることが唯一の残念ポイントなんだ。
「変態だなんてそんなに褒めないでくれ」
春人は照れたように頭をかいた。
変態と言われてなぜ照れる?
彼の羞恥のツボはわからない。
「褒めてないけど! って、そんなことより、レオだよ!」
レオを見ると、ソファに寝転び、スマホゲームに夢中になっていた。
全く反省してないじゃないか。
私は拳を振り上げ、そのままレオの頭に振り下ろした。
「いてぇ! 何するんだ、暴力マネージャー! 労働局に訴えるぞ!」
「うるさい! お前はいい加減、アイドルとしての自覚を持てえぇ!」
「マネージャー、次は俺を殴ってくれ! 道具を使ってくれてもいいぞ?」
これが新人アイドルグループ「ハルレオ」とマネージャーである私の日常だ。
レオというクズドルが足を大きく引っ張っているせいで、売れっ子アイドルなんて夢のまた夢。
はあ……。まさかこんなダメな奴だと思わなかった。スカウトしたときは逸材だと思ったのに。
自分の人の見る目のなさや、レオにやる気を出させられない自分にイライラした。
こんなときは……アレに限るか。
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