マネージャーの裏の顔

2/8
前へ
/94ページ
次へ
 嘘でしょ。何でこんなところにレオがいるの? しかも、決勝戦の相手だなんて一体、どんな確率なんだ。 「あ、ああ……」  私はその場に座り込み、頭を抱えた。 「そんなことにお金と時間を使うなんてバカな人間のすることよ」 「ゲームをしたって何も残らないじゃない。いい歳なんだから、現実逃避はやめたら?」  ぐはーー! 昨日、あんなに偉そうなことを言ってたくせに、本人は生粋のゲームオタクだなんて示しがつかない! しかも、なんて見事なブーメラン発言だ。  ……終わった。完全に終わった。さらば私のマネージャーライフ。明日から転職活動が始まるのか。 「顔色が悪いですけど、大丈夫っすか?」  項垂れていると、レオは私の背中をさすり、心配そうに声を掛けてきた。 「……あ、ありがとう」  普段からは考えられないレオの親切な対応に私は動揺しまくった。  こいつ、いつもより数倍優しいな。まるで、私だと知らないみたい……待てよ? 「あの……あなたと私は今日初めて会いましたよね?」  恐る恐る尋ねると、レオはにっこりと笑った。 「はい! だから、俺、Uuraさんに会えて嬉しいんすよ!」  レオの答えに私は心の中でガッツポーズをした。  よっしゃあぁ! 全然ばれてない!   危なかった。もう少しで仕事を辞めないといけないところだったよ。  このチャンスを逃すわけにはいかない。 「そうですか……じゃあ、さよなら!」  レオに背を向け、走り去ろうとしたが、「グンッ!」とつんのめった。腕を引っ張られたからだ。 「あの! 待ってください!」  私の腕を引っ張っているのはもちろんレオだ。振り解こうとしたが、びくともしない。  逃げられないと観念した私は仕方なく振り返った。 「な、何でしょう……はあっ!?」  私は唖然とした。  レオの鼻から赤い血がポタポタと垂れていたからだ。ホラーかよ。  ニコニコと笑っているレオは余計に怖い。 「鼻血、出てるじゃん!」 「……え?」  私の指摘にレオは自分の鼻まわりを触る。  どうやら鼻血が出ていることに今、気づいたようだった。 「うわ、本当だ。俺、師匠に会えて興奮してたから」  レオは「えへへ」と照れたようにはにかんだ。 「えへへじゃない! ほら! とりあえず、これ使って!」  慌ててポケットティッシュを渡すと、レオはまるで宝物をもらったような顔になった。 「Uuraさんからのプレゼント……もったいなくて使えません」 「それ朝、道端でもらったティッシュだから! ほら、これで鼻押さえて上向いて! とりあえず、あそこのファミレスに入ろう!」  
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加