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⑧
本部からの情報によると、最後の2人で生徒は全員帰還になる。
恐ろしいレースになったが、死傷者が出なかったのは良かった。ただ、レース運営については後程、問題になるだろう。今頃、大会運営委員長代理の牛窓はどんな顔をしているのか……。
揺れる海燕にへたり込んで、海水を滴らせながら航太郎は、晴海を見る。
「松平さん、ありがとう。ほんとに助かったよ。あの状況の中、僕はどうしていいのか分からなかった」
「あの子もう、パニック状態でしたからね。先生、ああなったら誰が何を言っても無駄です。ただ、何としてでも生還することだけを考えないと」
「そうだね。松平さんもいままでいろいろな事を経験してきたんだね。また、教えてください」
「え? そんなあ、私が先生に教えるなんて。先生も的確な救助活動でした。鬼無先生だからこそ、死傷者を出さずに済んだと思います。生島先生が言った通り、先生の補佐をしてよかったです」
晴海は、まだ周りの海面を確認しているようだ。こんな女性が、こんなにも強い人がいるなんて……。
鬼無航太郎は、沖に向かって叫んだ。
「まだまだ、日本の海は捨てたもんじゃないぞ!」
終
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