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④
高校ヨット競技新人大会、出艇数 420級ヨット32艇、選手64名。男子15艇、女子17艇でレースが行われる。
ヨットレースは、本部船の位置からスタートする。その後、海上に設置されたマーク(ブイ)をいち早く回って、フィニッシュ(ゴール)することを競う。各レースごとに順位が得点になる。この大会は、3レース行い得点が一番少ない艇が優勝となる。
審判艇は、レース艇がルール通りマークを回っているかどうか確認するのだ。ルール違反はペナルティが課される。
午前中は順調に2レースが行われた。本来なら、ここで一旦ハーバーに帰って昼休憩になるはずだったが、
「ええ風が吹いとる。続けて3レース目もやってしまえ」
運営委員長代理の牛窓がレースの続行を宣言した。
『3レース目を実施する』ことが、トランシーバーで全運営艇に指示された。
審判艇海燕も3レース目実施の指示を受ける。
「第3レースもやるらしいよ。選手は疲れているし、お腹もすいてるだろうに。牛窓は鬼だな」
ぼやく勝賀。
「あの、ちょっと待ってください。北の空、暗くないですか」
晴海が立ち上がって指をさした。確かに暗い。何かが迫ってくるような。
「ひょっとして、ブローか? 確かめよう。勝賀先生、あのあたりまでぶっ飛ばしてもらえませんか。変なブローが来ていないか、この目で確かめたいので」
「わかった。鬼無先生。晴海ちゃんもしっかり掴まってなよ。おりゃあ、フルスロットル!」
全速力で暗雲に向かって疾走する海燕。どんどん周りが暗くなってくる。
「ああ! ブローだ。明らかに海面の色が濃くなっている」
航太郎が大声を出しながら晴海を見る。
「そうですね! でもあのブロー色が変です。普通、ブローは一様に色が濃くなっていますが、あのブローは、濃い所や薄い所があって、風が巻いているようにも見えます。先生、あんなブロー今まで見た事ない!」
「そう言ってる間にブローに突入するよ!」
勝賀が叫ぶ。
重い風の衝撃。と思いきや一瞬無風になったり、反対方向から風が吹いてくる。ヨットなら、どう操艇したらいいかわからず混乱する風だ。
「乱気流……。まさにブローポケット」
目を見開く航太郎。
「ヤバいよこの風。レースを中止させないと。鬼無先生、本部船に連絡だ」
そう言って、勝賀は海燕を本部船に向けて、ぶっ飛ばす。
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