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「この成金女が! 今に化けの皮を剥いでやるわ!」 「何をおっしゃいますやら。世の中、金で解決できないことはございませんのよ」 「姑に向かってなんて口の利き方なの!」 「ご心配していただかなくとも、お義母さまには今後お会いする予定はありませんもの。ああ、あんまり怒ると長生きできませんわよ。せいぜい領地で心穏やかにお過ごしくださいませ」 「むきいいいいい」 「おーほっほほほ」  ハンカチを噛みしめる貴婦人に、頬に手を当て気持ちよさそうに高笑いをするご令嬢。流行りの演劇であるならば、ベンジャミンも次の展開がどうなるのかとわくわくしながら見守っていられただろう。  だが残念ながら、ここは劇場ではなく自宅である。ついでに言えば、目の前のふたりは女優ではなく自身の母親と婚約者だったりするため、このまま高みの見物というわけにもいかなかった。まあ高みと言ったところで実際は扉の隙間から、使用人とともに覗き見しているわけなのだが。 「オーレリア嬢、それから母上。これは一体何の騒ぎかな?」 「ベンジャミンさま!」 「ベンジャミン!」  真っ青な顔で扇を取り落としかけた婚約者を前に、ベンジャミンも覚悟を決めた。
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