水の記憶

2/2
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
 私は再び目を開いた。早朝のひんやりした空気が感じられた。グレイが私をのぞきこんでいる。 「気分はどうだ」 「……混乱してる」  そう言うしかなかった。  これまで悲劇の終幕しか知らなかったのに、そこに至る物語を何百と見せられた。  全てが根底から(くつがえ)され、もう彼らを思い出すと(まぶ)しい。  彼らは可哀想なだけの戦士ではなかった。相手がどれだけ強くても覚悟を決めて、自らの意思で戦った。私が見たこれまでの光景は、その最期の一瞬だけを悪意を持って切り取ったものだった。 ――これじゃ、まるで。 「全ての死にあんたが責任を負うことはないって、やっとわかった?  皆、自分の意志でここに来て戦ったんだ。希望を夢見て」 「……」 「知らないほうがよかった?」  私は首を振る。 「だけど私の愚かな言葉は、罪は……消えない」  グレイはいつかのように、私を抱きかかえた。 「見せたいものがある」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!