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「昨日、聞いてたんだろ」
次の日。朝食を食べない私を見て、グレイは言い当てた。
わかっていた。魔族の役に立つから生かされていたと。だけど団長の話で、改めて烙印を押された。私は被害者ではなく、加害者だと。
「城で死んだ人達は、私が殺したようなものね」
発した言葉が、自分の胸を刺す。
「それは違う」
ぴしり、とグレイは言った。
「あんたのせいじゃない」
「でも」
「研究してあんたを治療してみせる。必ず」
グレイの瞳には固い決意があり、とても固辞できる雰囲気ではなかった。だけど。
翌日から身体が起き上がらなくなった。
看護師達が世話をやいてくれたが、食事が喉を通らない。小屋の中を歩き回らなければ、体力が落ちるとわかっていたけれど、どうしても。
雨音が惨劇をよみがえらせる。耳をふさぐようにして寝て、起きても雨音が聞こえる。
少し、グレイのことが煩わしくもあった。
「それは呪われている」と、城で会った金髪の彼女は言った。
「呪われた子なんだ」と、団長も言った。
グレイは一人でも生きていける。慕う人も大勢いる。なぜ私を助けて、いまだに固執するのか、わからない。
生かしておいても意味がないのに。
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