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ベッドの中、私の思考は今までとまるで違うことを考えていた。私に客って、誰だろう。過去のことを知っている人なんだろうか。それとも。
答えはすぐに出た。小屋の扉がノックされた後、返事も待たずに「お邪魔するよ」とルイーザが入ってきたのだ。
「おはよう! 久しぶりだね、調子はどうだい?」
私は驚いた。彼女の声は食堂の中と同じように大きく、響いた。狭い小屋のすみずみまで空気が変わってしまった。
「おはよう、ございます。
あの……この間はありがとうございました」
姿を見た途端、先日のことが思い出された。あの時は一人で食事もとれなかった。ルイーザに手伝ってもらって、でもうまくしゃべれなくて、いつかお礼を言わなくてはと思っていた。
「話せるようになったんだね」
彼女は窓を開ける。外気が入ってくる。新鮮な空気が肌に触れる。
「今日、食堂は?」
「休みにした。なんだかあんたのことが気になってね。グレイ先生が見舞いに来ればいい、って言ってくれたのさ。ああ、ついでにちょっと片付けさせてもらうよ」
そう言うと彼女は散らかった小屋の中を片付け始めた。看護師達も私の世話以外のことまで手が回らず、床には何かしら落ちていて、今朝グレイが使った食器も夜までそのままだ。ルイーザはその一つ一つを丁寧し、しかし驚くべき速度で片付けていき、私はまた「ありがとうございます」と言った。
「あたしは体を動かしていないと落ち着かないのさ。それに、今日はこうやって片付けるつもりできたんだ。先生は忙しいし、散らかってるだろうと思ってね」
鼻歌を歌いつつ、彼女はどんどん家事をこなしていく。その右手は金属でできた作り物で、でも生身の手と同じように動いていた。ベッドに寝たまま、落ち着かなかった私は声をかけた。
「あの、その腕は」
「ああ、これかい?」
ルイーザは掃除の手を止めて、義手を私に近づけて、よく見えるようにしてくれた。金属の中、奥の方でかすかに、赤い光が走るのが見えた。
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