見舞い

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 夜中、帰ってきたグレイは、私の姿を見て肩の力が抜けたようだった。  食事をベッドの横に運んで、二人で食べた。グレイが上半身を起こすのを手伝ってくれて、看護師の家族が作ってくれた台をベッドの上に置く。そうしたらその場で食事ができる。ルイーザは野菜のスープと、柔らかいパンと、肉と野菜を炒めて、卵でとじたものを置いていってくれた。どれもこれもありがたかった。 「朝の患者さんは?」 「助かったよ。大丈夫だった」 「よかった」  口調が柔らかいのに気付いたのだろう、グレイは首をかしげた。 「朝と顔つきが違う。どうしたんだ」 「ルイーザがお見舞いに来て、話したの」 「……そうか」  私はひと匙、スープを口に運び、噛んで、飲み込んだ。 「グレイ、私に記憶を取り戻す魔法をかけて」  グレイがコップを持つ手が、空中で止まった。 「いいのか?」 「うん。知らなきゃいけないと思ったの」  私はまたひと匙、スープを飲み込む。あたたかなそれが、力を与えてくれる気がした。 「私は、私があの瓶の中に閉じ込められた理由を知りたい。そこを知らないと、どこにも進めない。私に未来があるのかどうかもわからない」  最初に会った時、ルイーザは幸せな人生を送っているように見えた。だけど今日は違ったんだとわかった。さらりと話していたけど、ルイーザにも痛みと悲しみを感じた時期はあった。それを乗り越えてきた彼女に、勇気をわけてもらえた気がした。 「今朝は言いそびれたが……記憶を取り戻すには、あの城に戻らないといけない。それでもいいか?」  わずかにためらいはあったけれど、私は「うん」とうなずいた。 「知りたい」 「わかった。明日出立しよう」  一回、二回。私は手を動かす。野菜、卵、肉。食べ物から元気をもらう。  少しでもたくさん食べて、体力をつけて。どんなことが合っても、まずは受け止められるように。  翌日、私とグレイは町を出た。
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