再び城へ

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再び城へ

 行き先がわかっているからか、今度の旅は以前より短く感じられた。外の空気は乾燥していて、季節の移り変わりを感じた。森の中を抜ければ木の葉が舞う。私は荷馬車の中で上半身を起こし、そのうちグレイの隣に座り、途中立ち寄った村では荷馬車のまわりを歩いてみた。最初とは大違いの回復速度だった。「目的ができたからな」とグレイは笑った。 「着いたぞ」  グレイに肩を貸してもらって、私はついに城の庭へと降り立った。  城はまるで人気がなかった。魔族も、たくさんいた人もいなくなって、廃墟と化していた。陽は傾き、あたりは橙色に染められていた。  グレイは片手に杖を持ち、私を支えながら進んでいく。  地下室は崩れてたままだった。天井には穴が開き、地上の部屋に通じて、光が差していた。影になっている壁には苔が生えていた。  瓦礫を魔法で動かし、瓶があった位置に寝かせられた。背中に固く冷たい、石の感触。魔法をかけられるならこの場所だろうと予想はしていたけれど、本当は叫び出したいくらい嫌だった。そばにグレイがいて、瓶や彫像が破壊されていること、天井が抜けて景色が変わっていることを意識して、なんとかその場にとどまることができた。    杖が胸に当てられる。  呪文と共に、白い光が私を包む。
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