運命の日

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 気がつくと地下室には魔術士だけがいた。彼はにこにこしながら杖を振る。黒い蛇に似た紋様が私の両手首をぐるぐると()う。  力が奪われていく。  苦しい、気持ち悪い。 「もう魔法は使えない、愚かな子よ。  ――仕上げをしよう」  彼が杖をどん、と床についた。  血だまりが動き出す。細い筋が四方八方の床にうねりながら広がる。  壁を伝って天井へと(のぼ)り、魔法陣を描く。そこで血は透明に変わった。  天井に水の膜ができる。みるみる限界まで膨らみ、大きな水滴となって落ちた。  ぱしゃ、と私の顔にかかる。 『うぁっ!』  目の前に映ったのは、さっきの男だ。  苦痛に(ゆが)む表情。  耳を塞いでもみしみしと、音が。  そして血が流れる。 「やめて」  私が助けを求めたから、この人は苦しんで死んだ。  私のせいだ。 「やめてぇ……」  絶望した私を見て、魔道士は満足そうに去った。
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