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「どうしてこんなところに」
「今出してあげる」
結局、地下室に辿り着いた者は皆殺された。
その優しさが仇となって。
私は魔族の道具、城の罠になり果てた。
ごめんなさい。
生き残ってしまって、ごめんなさい。
虚ろな心のまま涙を流す。体の表面をなぞる魔術は、回数を重ねるごとに私の記憶を薄く、おぼろげなものに変えていった。城内での無惨な光景が頭の中を占めていく。そればかり、そればかりで眠ることもできず、死ぬこともできず。あれだけ贅沢をしていた食事を欲しいとも思わなくなり、身体の色が抜けるように髪も肌も白くなっていった。
それから何年も経ち。
かすかに聞こえる水音が、絶望の前触れになった。
――ぴちゃん。
そして、悲鳴が聞こえる。
私は涙を流す。
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