24人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
水の記憶
今度は悲鳴は聞こえなかった。
代わりに、魔族と対峙する戦士の姿が次々と頭をよぎる。
「俺が食い止める、先に行け!」
領主の間で、仲間の盾となった剣士。
「彼女に帰るって約束したんだ!」
若者が弓を引き絞る。
「領主様の仇だ! 成敗してくれる!」
荒れ果てた庭で斧を構える老戦士。
聞き覚えがある声、見覚えのある姿。
私は目を見張る。これがあの、壮絶な最期を迎えた戦士たちか。
猛々しい姿に、悲哀の色はない。
「最後まで、諦めてなるものか!」
鎧に身を包んだ若者――あの金髪の戦士だ。まだ一滴の血も流れていない。
「うぉぉおお!!」
咆哮が響く。
彼らの姿に呼応し、私の胸に熱いものが広がっていく。
最初のコメントを投稿しよう!