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それから
暖炉の火が室内を照らす。温かい部屋の中、私は言葉を選びながら、慎重に物語を紡いでいた。
「そして彼は仲間を逃がし、勇敢に剣を振るって諦めず戦いました。
――とても立派な最期でしたよ」
目の前に椅子を並べて座る、老夫婦の涙が頬に光った。奥に座っていた金髪の女性――ソフィアが顔を押さえて足早に部屋から出て行った。
しばらくして、私は杖をつきながら部屋を出た。ソフィアは裏の庭で泣いていたのだろう、腫れた目をして、戻ってくるところだった。
彼女は私を見て、今一度目元をぬぐい、頭を下げた。
「ありがとう。
そして、ごめんなさい。城で私はあなたにひどい扱いをした。
兄が死んだあの城で、悲しみのままにあなたを手にかけようとした。あなただってずっと城に囚われていて辛かっただろうに。
それなのにわざわざここまできてくれて、兄の話をしてくれて……。とても感謝しているわ。どう御礼をしたらいいか……」
金貨を差し出そうとするソフィアを私は止める。
「よかったら、あなたの兄がどんな人だったか、私に教えてもらえませんか」
ソフィアは大きく目を見開き、微笑んだ。それから両親を呼びに行った。
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