それから

1/3
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ

それから

 暖炉の火が室内を照らす。温かい部屋の中、私は言葉を選びながら、慎重に物語を紡いでいた。 「そして彼は仲間を逃がし、勇敢に剣を振るって諦めず戦いました。  ――とても立派な最期でしたよ」  目の前に椅子を並べて座る、老夫婦の涙が頬に光った。奥に座っていた金髪の女性――ソフィアが顔を押さえて足早に部屋から出て行った。    しばらくして、私は杖をつきながら部屋を出た。ソフィアは裏の庭で泣いていたのだろう、腫れた目をして、戻ってくるところだった。  彼女は私を見て、今一度目元をぬぐい、頭を下げた。 「ありがとう。  そして、ごめんなさい。城で私はあなたにひどい扱いをした。  兄が死んだあの城で、悲しみのままにあなたを手にかけようとした。あなただってずっと城に囚われていて辛かっただろうに。  それなのにわざわざここまできてくれて、兄の話をしてくれて……。とても感謝しているわ。どう御礼をしたらいいか……」  金貨を差し出そうとするソフィアを私は止める。 「よかったら、あなたの兄がどんな人だったか、私に教えてもらえませんか」  ソフィアは大きく目を見開き、微笑んだ。それから両親を呼びに行った。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!