それから

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 杖を支えに歩く。息子の話をする老夫婦の笑顔を思い出し、足取りは軽い。  村の広場にグレイの荷馬車を見つけて、時間をかけて乗り込んだ。彼の帰りを待つ。  私達は、時折旅するようになった。  魔族に(とら)われ、城で戦士達の最期を見続けた悲劇の少女。彼女に聞けば家族の最期がわかる――噂はいつしか、国中に広まった。  私は依頼を受けて、遺族に話をして回るようになった。  初めは慣れなかった。グレイと話し合い、なるべくその人の良い部分を語ることにした。勇敢であったとか、仲間想いであったとか。  すると、遺族も口々に死者がどんな人物だったか話してくれた。  優しい夫だった、本が好きだった、畑仕事が嫌いで、いたずらっ子で、兄弟を大事にしていた――。  沈んだ顔が、別れる頃には笑顔に変わっていく。役に立っているのは嬉しく、生きがいを感じた。  私自身、彼らの歩んできた話を聞くたびに不思議と満たされていくのを感じていた。それぞれの色鮮やかな人生が垣間見え、私が瓶の中で過ごした暗くて辛い時間が、明るく塗り替えられていくような心地さえしていた。  これが、私の生きる理由になっている。  命尽きるまで、続けていく。
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