瓶の外へ

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瓶の外へ

 現実じゃないみたいだ。瓶の外に出るなんて。何度瞬きをしても、目の前の景色が  身体がぐらり、と傾く。 「おっと」  男は私を支え、「歩くのは久しぶりか」と抱えてくれた。  見上げると、杖の宝玉と同じ青緑の瞳が(きら)めく。 「あんた、名前は?」  首を振った。思い出せない。他の思い出と共に、失われた記憶の中だ。 「俺はグレイ。よろしくな」  私はうなずいた。  彼は私を抱えて階段を(のぼ)った。途中、足元に転がる魔族の死体を避けた。そのまま、突き当たりの扉を開ける。通路の向こうから歓声がどっ、と耳に飛び込んできた。意味のわからない魔族の言葉とは違い、「やった!」「取り戻したぞ!」と人々が勝利を祝う声だとわかった。 「終わったみたいだな」  グレイがぽつりとつぶやいた。大声で叫ぶでもなく、かえってこれからが大変だというような、静かな台詞だった。  
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