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「ほんまに、誰も悪くないのにな」
せいちゃんはポツリと言った。僕はそれに頷く。
「ほんまになぁ」
「いや、いや、何言うてんねん。よっちゃんはあかんから」
そして、僕たちは再び笑い合った。
遠くで龍の唸り声が聞こえる。
振り返ると、明るい空の向こう側、山の上に灰色の雲が立ち込めている。
もうすぐ龍が来る。
龍はいいことも、悪いことも運んでくる。
僕たちが遠く及ばない、自然の力。だから、僕達は力を合わせて、立ち向かっていくしかないのだ。
なんてことを思いながら、僕はポケットから手を出した。
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