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しかし、せいちゃんがひとしきり笑うので、僕も釣られて笑った。
「なぁ、せいちゃん。あれ、お兄ちゃんの骨やったんやろ?」
僕の問いかけに、せいちゃんは目尻を拭いながら、静かに頷いた。
「悪かったな。盗んだりして」
「ええよ。元はと言えば、焼き場から持ってきた僕が悪かったねん」
火葬場で勤める父から、あれはせいちゃんお兄ちゃんの骨だと教えられたのは、殴られた日からしばらくたった時だった。
15年前の嵐の日、お兄ちゃんは高校の部活の帰り道、氾濫した川に呑まれた。
それ以降、粗末なコンクリートを渡しただけの橋から、しっかりして、落下防止を担う鉄筋の、手すりがつけられたものの、
「母さんも、父さんも、あの事故は自分のせいだって、責めるけどさ。
誰も悪くないんや」
僕もその通りだと思う。けれど、ご両親は自分達も、息子を連れ去った龍神も許すことができなかった。
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