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それから、僕達の間にはいつも『龍の骨』が横たわっていた。
せいちゃんもずっと骨の事が気にかかるのか、無断で学校にまで持ってくるようになった。そして、彼は無意識なのか何気ない時間にもポケットへと手を伸ば、取りつかれているように、触れていた。
しかも、遂には奇妙なことまで言いだした。
「なぁ、何で人は生れてくるんやろな」
兄のお古を持ってくることはなく、僕との時間もただ『龍の骨』を愛でることだけになりつつあるせいちゃんが突然言った。
恐竜の図鑑を開いていた僕は、本から顔を上げる。
「そりゃ、お母さんが産んでくれたからやろ」
僕は普通な答えを返した。
すると、せいちゃんは骨を撫でていた手をピタリと止めて、
「そしたら、短い人と、長い人の違いはなんや。
みんな短いのなんか嫌やろうに」
と、分けのわからないことを言っていた。
僕は「なんや、こいつ」と思う反面。
誰のせいでもなく、隕石のせいで死ぬはめになった恐竜達の壮大な物語を想った。
きっとせいちゃんの龍も、どこか地中で眠る恐竜も、みんな死にたくなかっただろうに。
そして、僕はいつかは訪れる自分の死に思いを馳せると、その夜、怖くて眠れなかった。
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