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第24話 愛人の名前は愛子
あれ以来、社長からの言い付けだと言って、彼女は何度か自宅にやって来た。
「立花愛子ともうします。 実は私は統合社長と親しいんです。 その……男女の関係なんです。 私達は愛し合っているので、奥様には社長と別れて戴きたいんです。」
《この女、遠慮も無く核心部分を語ったね。》
「それは主人の意向なんですか? 主人が私と別れて貴女と一緒になると言ったんですか?」
「いえ、統合社長は優しい人ですから、本音を言えないんです。 ですから、私が代弁して言わせてもらっています。」
「それはオカシイですね。 大体夫婦の事は他の人には分からないじゃないですか。 他の人が代弁して、果たして主人の意向は曲げられているんじゃ有りませんか? ああ、ひょっとして遊ばれているのは、貴女じゃ無いんですか? 浮気は浮気であって、本当の夫婦には成れないですからね。」
その事務員は目を白黒して言い負かされまいと必死に言葉を探していた。
「だから、社長と私は愛し合っていてですね、一緒になる運命なんです。」
「運命だか何だか知らないけど、貴女はドロボウ猫なのよ。 身のほどをわきまえなさい!
ただの事務員のくせに! 悔しかったら、統合を連れてきて頭を下げさせる事ね! もっとも、統合が本気だったらっていう仮定の話だけど。」
事務員は勢いよく立ち上がると何も言わずに玄関から出ていった。 よほど悔しかったんだろう。
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