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「あ、ごめんなさい。嫌味を言いたかった訳じゃなく……」
「いや、全然。それよりルナってこいつ？ 君の猫？」
彼は白と黒が入り混じった模様の猫を指差し、そう聞いた。
「はい。時々、脱走しちゃうんだけど今日も。それで探してて……」
彼はいきなり笑い出し、もう一匹の白い猫を抱き上げた。
「そっか、すっげぇ偶然！ こいつ『アルテミス』って言うの。ま、野良だから俺が勝手につけたんだけどね。どんな偶然かわかる？」
「「！！！！！！！」」
私たちが同時に叫んだのは、子どもの頃に夢中で見ていたアニメのタイトル。
そして二匹の猫の名前は、作中に出て来る猫の名前だ。
目を見開き、叫んだ私の声に彼の声が重なり、彼はまた笑い声をあげた。
「こいつ、全身白だけど、しっぽの付け根と額に薄い茶色の模様あるだろ？ このオデコの模様が月みたいでさ。あの猫の『アルテミス』に似てるなって」
「ホントだ〜！ 似てます！」
「こいつは？ なんでルナ？」
「この子はそもそもオスだし、白黒模様だし、あの黒猫の『ルナ』とは程遠いんですけど……。
生まれたばかりのこの子が来た時、妹と私はそのアニメが大好きで、妹が絶対名前は『ルナ』がいい！ と言い張って、それが通った形に」
「そっか〜。お前、ルナなんだ」
彼はルナの頭を撫でる。
男の人が苦手で、父や兄にも触らせないことが多いくせに、ルナは珍しくご機嫌を取るように、彼に向かい「にゃあ〜」と鳴いた。
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