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駿さんは更に続ける。
「で、その “ 星屑のステージ ” って何なんだ? と思って、調べてみたんだよ。
そしたらね、
『市民薄明と航海薄明の間の僅かな時間に起こるそのイリュージョンを背景に、そのステージ上で心を込めて歌うと、たった一度、五分間だけ願った時間が与えられる』
その遊園地のステージには、そんな都市伝説があるんだって。
そんなただの噂話……と思ったよ。
簡単に信じられる話じゃないって分かってる。
だけど、7月18日といえば、あいつが亡くなった日だろ?
もしそこに本当に奏詞が戻って来るのなら、本当にそんなことが叶うのなら……。
俺は一緒に演りたいし、君にも来て欲しい……そう思ったんだ」
……彼が……戻って来る?
ステージで歌う?
その後に “ 五分間 ” の時間が与えられる?……
例え見た夢の偶然が重なったとしても、それがあり得ない偶然だったとしても……
そんな話が実現する筈なんてない……。
瞬きを繰り返し大きく息をする私に、駿さんは更に話し続ける。
「去年の夏フェス、誰よりも出演を熱望してたの奏詞だったし、意欲的に準備に取り組んでたからね。
出られなかったの、すっごく悔しかったと思うんだよ。
だから、歌わせてやりたい。
それと、間際になってあいつが持って来た新曲があってね……
『これを歌うことを、ある人と約束した』って言ってた。
……君のことだよね?
だから奏詞は、その曲を歌う約束を果たして、 “ 五分間 ” を君に会う為に使いたいんだと思う」
駿さんは真剣な眼差しで、私にそう訴えた。
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