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3. ブルーモーメントの奇跡
空を、大地を、ギラギラと照らしていた真夏の太陽が地上に傾いて行き、地平線に沈んでいく。
眩しいほどのオレンジ色が、地上にどんどん吸い込まれて行き、ほんの少しだけ残った鮮やかな光が、瑠璃色と混ざり合い空を彩る。
――そして深い深い青色に変わるブルーモーメント――
テンポの速い曲が、クラッシュシンバルと、バスドラムの低い音で締め括られた。
同時に、ステージを囲った上部と左右に設置されたライトが一斉に点灯し、深い青の空に光の矢を刺した。
現実を忘れたようにリズムに乗っていた観客達は、少しの間を置いて流れて来た、駿さんのギターの優しいアルペジオに耳を澄ませ、水を打ったように静かになった。
あの曲だ……。
ジャングルジムの天辺に二人で座り、「空から降って来た」と彼が口ずさんだ曲。
「フェス、見に来て。この曲、仕上げて歌うから」
彼はあの夜、突然の短いキスの後、私にそう言った。
あの時の私は、ただ驚いて、頷くことすらできなくて……。
それが彼の最後の言葉になるなんて、あの時は思いもしなかった……。
そして、私の心をあの夏に置き去りにしたまま、一年が過ぎた。
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