15人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
彼と何度か過ごしたあの公園の近くに差し掛かると、ジャングルジムの天辺に人影がぼんやり見えた。
…まさか……いや、そんなこと、あるわけ……
ハッとして思わず駆け寄ると、そこには彼が座っていて、さっきステージから私を見つけた時と同じ、柔らかな微笑みを見せた。
胸が詰まり何も言葉は見つからず、心臓の鼓動を何とか呑み込もうとする。
私はただその場に立ち竦み、彼の姿を見上げることしかできなかった。
彼は何も言わず頷いて、ジャングルジムの自分が座る左側に目をやり、また私を見た。
ひんやりと冷たい鉄棒を握り締め、一段、もう一段と、彼と星に近付いていく。
彼の膝の上で、小さな猫が眠っていた。
「ねぇ、こいつってルナとアルテミスの子ども?」
彼は、まるで一連の出来事が何もなかったかのように、
あの頃にそのまま戻ったかのように、
人懐っこい笑顔で、隣に座った私に聞いた。
「……ええ。確証はないけど、多分そうじゃないかと」
私も高ぶる気持ちを必死に抑え、ごく普通を装い、そう答えた。
私の飼い猫『ルナ』と、彼が面倒を見ていた野良猫『アルテミス』
この二匹の猫が、私達を繋いでくれた。
白黒のまだら模様のルナ。
額にミルクティー色の三日月に似た模様がある、白猫のアルテミス。
小さな猫は、額の三日月模様と、脇腹とお尻に黒い模様のある白猫。
間違いないと思った。
最初のコメントを投稿しよう!