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「ダニエル、お前の仕事の大変さはよくわかった。これほど神経を使う仕事とは思いもよらなかった。このまま見ていると、こちらが倒れそうじゃ。お前の仕事が真剣であることはよくわかったから、今日はこれで帰るとする」
ダニエルは教皇の目を見据えた。
「私どもの仕事ぶりをわかっていただき、恐悦至極に存じます。私どもが決して怠けているのではないとわかっていただけて嬉しゅうございます。それでは出口までお送りしますが、白い布を外さないようお気をつけください」
ダニエルとアルドは、教皇とお付きの者を礼拝堂の出入り口まで見送った。
「教皇様、左手に絵具がつきました。ちょっと失礼します」
ダニエルは、教皇の左手から白い布を取るときに、自分の右手の小指を教皇の左手の甲の上に走らせた。
「おお、確かに」
教皇の手の甲には薄赤い色がついていた。
ダニエルは、王の白い布を自分の作業着の右のポケットにしまった。
「アルド、水差しと白い布を持ってこい」
水差しを傾け、教皇の手の甲に水をかけ、白い布で二、三度拭くと色は消えた。
「これで、ようございます」
ダニエルは作業着の左のポケットから白い布を取り出すと、また教皇に差し出した。
教皇は礼を言って、白い布で口元を押えながら、帰って行った。
翌日、教皇庁から使いの者が来た。
「教皇様は、昨日、教皇庁に戻られてからお倒れになった。ダニエル、何か心当たりはないか?」
「はて? まったくありません」
「とりあえず、お前と弟子のアルドを連行する」
教皇庁の役人がダニエルとアルドを逮捕した。
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