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「……それは、まぁ」  東堂も本当のところは気になっていたのだろう。やむを得ずという感じで東堂が頷いた。東堂が首を縦に振るのを見て沙織が、 「じゃ、中に手を入れるね」 と、コートのポケットの手を入れる。指に当たったものを取り出すと……。  出てきたのは、茶色の皮のパスケースだった。その中に入っている定期券を抜くとその後ろに古びた写真が入っていた。 「いつの写真だろう」 「お母さんと赤ちゃんだよね。後ろに写っている白い建物は病院かな」 と、沙織が言うと、 「写っている赤ちゃんは幸だと思います。面影があるから。彼女、捨て子なんです」 と、東堂が答えた。 「捨て子?!」 「意外。苦労人なんだ」 と、思わず言った光輝の脇腹を(失礼でしょ!)と、今度は沙織が肘でつついく。
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