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沙織は写真を手に、
「ともかく。写真が入ってるって私の推理は当たってたわね」
と、胸を張った。胸を張った沙織に構わず光輝は沙織の手首ごと写真をひっくり返した。
「裏に何か書いてある。多分、赤ちゃんの生まれた日付と、お母さんと赤ちゃんの名前だよね。うん、幸って書いてある」
「もう、無視するかなー」
「沙織の推理はこの際どうでもいいだろ」
と、言い合う二人の横から写真の裏を確認した東堂の顔色が変わった。
「……まさか。嘘だ」
「東堂?」
「東堂くん?」
深刻な表情で黙ってしまった東堂を心配して沙織と光輝が声をかけると、
「この、母親の方の名前……うちの母と同じなんです」
と、虚な表情で東堂が答えた。
「すみません、今日は家へ帰ります」
と、トボトボと歩いてゆく東堂の背中を見送ると、沙織はクシュンと小さくくしゃみをした。幸のコートを東堂に渡してしまったためだ。体を震わせる沙織に、光輝が自分の脱いだコートをかけてやる。
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