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 店を出た沙織は、 「マフラーだけ貸してもらってもなぁ」 と、自分を抱きしめた。光輝のマフラーに半分埋まる沙織の鼻の頭は、寒さのせいでちょっぴり赤かった。 「なんでコート忘れるんだよ」  隣を歩く光輝はコートのポケットに両手を入れ肩をすくめた。 「待ち合わせに遅れると思って慌てたら着るのを忘れたの! ほら、最近暖冬だったでしょ」 「どうせ、冬休みだからってギリギリまで暖房かけた部屋でパジャマのままゴロゴロしてたんだろ?」 「そ、そんなわけないでしょ!」 「いーや、絶対そうだね」 「失礼ね。世の中に絶対なんてないんだから!」 と、言い合っていると、 「あ!」 と、立ち止まった沙織が前方を指差す。 「見て。すごい美男美女!」 「バッカ。指差すなよ」  慌てて沙織の手を掴んで下ろさせた光輝が、 「……東堂?」 と、首を傾げた。
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