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滝山沙織は憤っていた。
「三月も終わるっていうのに、なんでこんなに寒いんだろ。腹が立って余計に食欲が出ちゃう」
なんのことはない。慌てて飛び出てきたのでコートを忘れてしまったのだ。
沙織がいるのはファスタフード店二階の食事席。歩道に面した大きなガラス窓側にあるカウンターで、自分の顔ほどもあるハンバーガーにかぶりついている。
茶色のトレイにはまだ開けていないハンバーガーの包みが二つのっていた。
「あーあ、いつまで待たせる気よ」
持っていた分を食べきり、沙織はため息をついた。トレイの上に手を伸ばし、ハンバーガーの包みをもう一個取ろうとした時、
「下からでも大口開けてるのが丸見えだったぞ」
と、肩を叩かれ沙織は振り向く。
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