ポン酢よ、ありがとう!

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 でも今夜、竹さんと一緒にいた女性は寒いからだろう、ロングコートの両方のポケットに手を入れてズンズンと歩くような体格の良い人だった。 竹さんは相変わらずヒョロヒョロっと背が高くて少し猫背で女の人に付いていくように歩いていた。 でもその表情はとっても楽しそうで、今日あった事でも話しているのかなと思った。 二人とも髪には、白いものがだいぶ見受けられ、長い月日が流れたことを教えた。 私は自転車にまたがることも忘れてしばらく竹さんたちを見てしまっていた。 竹さんと多分、奥さんは、私からどんどん見えなくなって行った。 それにしても竹さんはしあわせそうだった。 私の長年の訳の分からない答えは直に見たことで思いがけず突然に解決したのだった。 竹さんは、ずっと前に会社で少しだけ知っていただけの女子社員が自分のことを心配しているなんてことは、全く知り得ない事だから、なんだか私ってずいぶんと情に深い人間だけど、かなり変なヤツだと思った。 …あっ、こんなことをしている場合じゃなかったことに突如気が付く私。 あれ?ポン酢は? 無意識のうちに、レジ袋にいれていたポン酢をコートの深めのポケットに入れていたようだ。 ポンポンと、コートのポケットのあたりをたたいたらわかった。 手を入れてみると、冷たかったポン酢の瓶はほのかに温かくなっていた。 私の心と同じじゃないか! 「竹さん効果だな」とか呟きながら自転車に乗って家路を急いだ。 ポン酢よ、うちの冷蔵庫の中にあったポン酢よ。 君が風前の灯ほどの量しかなかった為に、私を買いに行かせてくれてありがとう! 竹さんはこんなに近くに住んでいて、とってもしあわせそうだったよ。
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