2.玖賀速生 -1-

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2.玖賀速生 -1-

ーーーー… 「ーーじゃ俺、今日は先帰ります!ありがとうございました」 「はい、お疲れ様。また休み明けからも頑張れよ」 保健体育科の教諭に軽くお辞儀をした玖賀 速生(くが はやみ)は、タオルで額の汗を拭うと、スポーツウェアの上にジャケットを羽織った。 本来ならまだ正月休みで閉まっているはずの中学校の体育館を、季節性インフルエンザの流行で冬休み前にほとんどできなかった部活の練習を少しでも取り戻せたらという運動部顧問の思いから開放する許可をもらえたことに、部員たちはとても喜んだ。 バスケ部の速生も、ここ数日自主的に練習に参加していた。 「おーい玖賀!シューズ忘れてるぞー」 友人の1人が、足早に体育館を出て行こうとする速生に声をかけた。 「うわ、やべ!サンキュー、助かった」 「えらく急いでんな、今から何かあんの?」 速生はバスケシューズをバッグに放り込んで、友人の言葉に満面の笑みを返す。 「今日はさ、今から楽しみなことあるんだよ。帰ってからのお楽しみってやつ」 「??」 不思議そうにしている友人にへへ、と含み笑いをした速生は、じゃあな、と手を振ると走って体育館を出た。  「…うおっ、寒!」 運動後の体に外気は一段と寒く感じる。 ジャケットのファスナーを顎下まで上げて、左手のスマートウォッチに目をやった。 (そろそろ着いてるかもな…) 今日は隣家に、同級生の家族が越してくると聞いていた。 (どんなやつだろう、東京からって聞いてるし、この辺のこと案内したり、いろいろ教えてあげないとだよな) 期待に胸を躍らせながら、軽く屈伸して、駆け足のポーズをとる。 学校から自宅までは、およそ10分。寝坊した時は自転車を使うこともあるが、いつもトレーニングがてらジョギングで通学していた。 (もし一緒に登校したり、放課後どこか遊びに行ったりなんてできたら、楽しいだろうな) そう思いながら、速生は走り出した。
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