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4.二日酔いのきみと
翌朝ーーー…
優しい手つきでカーテンが開けられた。
窓から差し込む光が眩しくてつい、手で顔を覆う。
「…………ん、……」
夕人はゆっくりと瞼を開いた。
ぼやけた視界のなか、目を凝らすと、速生が真上から顔を覗き込んでいる。
「起こした?ごめんーー…天気良いからさ、ほら。
ーー夕人、おはよう」
とても穏やかな、速生の顔。
背後から差し込む朝日に照らされ、きらきらと光るその姿は、まるで5年前の自室で、起こされていたあの時を思い出すようで……。
「……めざまし速生ーーー……」
「……………えっ?」
ふと呟いてしまい、速生の不思議そうな顔を見てはっとする。
「あ、いや、ごめん…。
ーーーちょっと寝ぼけてた…。」
慣れない寝心地のベッドの上で、ゆっくり起き上がる。その瞬間ズキンと激しい頭痛に襲われる。
「いっ……!つぅ………。うぁ、あったま痛い…」
頭痛とともに謎の悪心、キリキリと響く胃痛。
完全なる二日酔いだーーこれは過去イチかも知れない。
「大丈夫か?ほら、水」
速生は冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを夕人に手渡した。
ありがと…と受け取り、下に目線を落として気付いた。昨日着ていた服とはまったく違う、だぼついたスウェットを着ている。
ーーーあれ、この服、誰の?
そういえば俺、どうやって、このベッドで寝た?
「ーーー思い出した?
夕人………昨日は大変だったんだぜ?」
速生が苦笑いしながら、夕人の横、ベッドの縁に腰を下ろす。
「俺………まさか吐いたの…?」
なんとなく、所々に思い出せるような、わからないようなーーー…思い出したくないような。
否定しない速生の表情に、ああ……と察する。
ーーーやらかした………。
「最悪じゃんーーー…ごめん……。
っ、うぁ、頭痛い…」
飲めもしない酒をやけになって飲み、酔っぱらって家に上がり込んだ挙句、吐いて後始末までさせるなんてーーー…
考えただけでもっと頭痛がひどくなる気がする。
「別にいいよ、気にすんなって。
酔っぱらった夕人とか、レアなもの見れたしそれでおあいこかな」
「いや、絶対面倒だっただろ。記憶に無いけどーー…ああ、最悪………」
頭を抱える夕人を見て、速生はふっと笑うと、
「ーーー意外と素直で可愛かったぜ?
着替えさせる時、“腕あげて”って言ったら、“はぁ〜い”ってちゃんとバンザイしてたし」
「はぁ!?う、嘘だろ……?」
ニヤリと含み笑いをする速生。
懐かしい、この悪戯っ子のような表情……。
ーーーって、いやいやいや、今は、懐かしんでる場合じゃない。
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