4.ずっと、きみのことを

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4.ずっと、きみのことを

「夕人、あのさ……昨日のこと、覚えてる?」 「え…?」 さっきとは打って変わって、真剣そうに、かつ不安な面持ちで速生は続ける。 「その………、昨日夜、玄関で、俺に言ってくれたこととか……」 玄関でーーー…? 酒のせいで抜け落ちた記憶の合間を縫って、自分の発した言葉が、脳裏に甦ってくる。 “好きだよ、” ”一緒にいて” “速生、大好き”。 ーーーうわああああああ!恥ずかしい!! なんなの俺!? そんなこと言った?言ってなくない!? いや、言ったな………。 なんだよ!どこの乙女だよ!! はっず!まじ無理!! 「えーーー……ナンノコト?」 「いや、なんで片言? 覚えてないのかよ?本当に? キスしてくれたことも?えっ、まさか……あれ全部、酔った勢い……? 俺のことからかっただけ?そうなの夕人?」 「……なっ!そ、そんなわけないだろ!!」 思わず声を張ってしまい、自分の大声の反動でまたひどい頭痛に襲われ「うあぁ、ズキズキする…」と頭を押さえる夕人。 「ーーー夕人。もう一回言ってよ。 そしたら……俺のことも、ちゃんと教えるから」 「…………………」 「俺がこれまでどうしてたか……知りたくない?」 「ーーー………」 夕人は黙ったままちら、と速生の顔を見る。 「ーーーき」 「…………えっ?」 「す、すき………」 顔を真っ赤に染めて俯いたまま呟く夕人。  速生はとても嬉しそうに、且つニヤニヤと意地悪そうな顔で見つめる。 「えっ??何が?聞こえないなぁ。 何が好きなんだよ?もっと大きい声で言って?」 ーーーなんなの、この拷問…?俺、なんでこんな弱み握られたみたいな感じになってんの? 「あーわかったよ!言えばいいんだろ! 好きだよ!好き好き!めちゃくちゃ好き! 速生のことが好き!! ーーーあっ、痛っ…だめ、頭に響く……」 半ばヤケクソに大きな声で言い放ち、ズキズキする頭を押さえる。 「そんな色気のない言い方するから…まあ、可愛いから許す………。 大丈夫か?痛み止め飲む?」 いや、いい……とペットボトルの水を口に含む夕人。 速生は横に座ったまま、ただ、夕人の姿を見つめた。 隣にいる今の夕人からは、昨日の夜バーで落ち合ってからずっと感じていた……、 どことなくよそよそしい違和感や今にもまた逃げ出しそうな不安感、張り詰めた緊張感。 そういったものがすべて抜け落ちているように思えた。 まるで、本当に、5年前のあの頃の夕人が横にいるようでーーー。 どれだけ経ってもきっと、自分の中の夕人は、あの頃のまま…色褪せることはないんだろうと思う。 どんなことがあっても、ずっと、変わらず想い続けている。 それはあの時、夕人が突然いなくなったあの日からも………何一つ、変わることはなかった。
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