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5.これまで、そして、これから
ーーー…
「ーーごめんな。こんな早く帰させることになって……」
速生がとても悲しそうに夕人の顔を見て言う。
担当する取引先のトラブルで電話がかかり急遽仕事に出ないといけなくなった速生は、急いで着替えたワイシャツにネクタイを通す。
「大丈夫だよ。
俺も家帰って、次にコンクールに出す絵の続きとかしたいし……」
ーーー家に帰ったらすぐにシャワー浴びよう。
ここにいるとなんかずっとお風呂入らせてもらえなさそうだ………
そんなことを考えながら、夕人は、脱衣所のドラム式洗濯機の中、乾燥の終わった自分の服を取り出した。
「ーー乾燥機あるなら、早く言えよな?
いざとなった時やっぱり便利だよな」
「だって………そんなの言ったら、”さっさと俺の服乾燥機かけろよ!”とか言って、スウェット脱いでさっさと帰りそうじゃん、夕人……」
ーーーよくわかってんじゃん、と思いながら、夕人はまだ少し乾燥機の温もりの残る自分の服に着替える。
貸してもらっていたスウェットを畳んで「ありがとう」と手渡すと、
「……じゃ、これ、俺専用にして。ーーーまた、泊まりに来た時用」
そう自分で言って、少し頬を赤らめて俯く。
「〜〜〜〜〜………あーもうっ!夕人のバカっ!
仕事行けないじゃねぇか!」
速生はそう言って、夕人の頬にキスしようとする。
「もう、そういうことしてると終わりが見えないから!いい加減にしろよな!」
「夕人が可愛いこと言うからじゃん……。
ーーーああ…このスウェット洗わないでおこうかな、夕人の匂いたくさんつけてもらって俺の眠りのお供に…」
「そういう変態なこと言うならもう来ないからな?
……あっ、そうだ」
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