5.僕たちの、宝物とお守り

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それはーーー カードケースに入った市立図書館の貸し出しカードだった。 “HAYAMI KUGA”の文字と、15歳の速生の顔写真………。 「あの時、誰かさんが救急車で運ばれてる間に、図書館の受付で渡されて、そのまま。 返すタイミングなくて……もう、貰っておいてもいいかなって。 ーーーそれからずーっと、俺の、お守りだったよ」 カードに込められた思い出の深さは、誰にもわからない。それは夕人だけのもので、カードの持ち主の速生にさえも、教えてあげたくないほどに。 「ーー……どこやったのかなって思ってたんだ。 夕人が持っててくれたんだな…。 返さなくていいから、それ、あげるよ。 お守り継続して? ーーーーほんと、やることなす事ーーー………」 速生は、とても切ない瞳で夕人を見つめる。 いとしくていとしくて、仕方ない。 こんなにも、想いが通じ合っていたなんて。 それでいて離れてしまった、二人。 これから、少しずつ、取り戻して行こう。 二人だけのあたたかく、色鮮やかな日々を。 悲しい記憶に上書きをして、描き続けるんだ。 二人だけの色を。 「お互い様ってことだな?」 速生は夕人を抱き寄せた。 ぎゅっと強く、腕の中、夕人の温もりを噛みしめる。 「ーーちょっと…人、みてるからやめろ、バカ!」 「チャージ完了。……まあすぐ使い果たすんだけどな」 笑い合って、二人は別れた。
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