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「ーーーそれに、まぁ、その。
もし一緒に住むんだったら…生計一緒になる可能性、あるし?
速生が出世して、昇進してくれれば俺も……その、まあ、嬉しいし、金銭面とかいろいろと……助かるだろうし?」
「…………………」
少し俯き気味に話す夕人から、マスク越しの照れた表情が、見えてくるようで。
速生はゆっくりと、もう一歩、近づく。
「な、ここ。
監視カメラとかーー…あるかな?」
「ーーえっ?ど、どうだろう…。無いんじゃない?
ーーーって、はぁ?何でだよ?」
「ま、別に俺、見られててバレても……全然いいけど。
……………夕人」
ーーーぐいっ
速生は夕人の肩を引き寄せ、ぎゅ、と抱きしめた。
「ーーー大好き。夕人………」
「ーーー……なっ、!バカ、ちょっと、……っ」
夕人の口元のマスクを掴むと、すっと下にずらし、頬に「チュ」とくちづけた。
「…………っ!」
突然の行為に顔を赤らめて、こんなとこで何するんだよバカ!と言おうと顔を上げた夕人は、すぐ近くにある速生の顔に一瞬驚く。
吐息が、耳にかかる。
「……今日の夜、空いてますか?夕人、先生。
僕のお相手してくださいよ。
ーーー後で、電話しますね」
耳元で囁く、甘い声。
速生は夕人の目を見てにやりと笑うと、
「それじゃ、失礼します」と言い、ブリーフケースを抱え応接室を出て行った。
ーーーバタン……
「ーーーーっ………くっそ、あいつ………」
1人応接室に取り残された夕人は、顔を赤らめたままーーー…優しい唇の感触の残る頬を、手の甲で擦った。
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