*三つの家*

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 月日が経ったある日のこと。それは、前触もなくやってきました。  野は裂け、山は崩れ、海は津波となって浜を押し流しました。この国に、大きな災いが降りかかったのです。  三つの家も、のきなみ壊れました。厚い壁に押し潰され、長男はひといきで死んでしまいました。太い梁の下敷になり、次男も息を引き取りました。ただ一人、屋根が軽いかやぶきだったおかげで、三男は少しの怪我で済んだのでした。  ぺしゃんこになった家から這い出て、三男は一人空しく言いました。 「われわれは遠い昔から、かやなどの草を編んで家にしてきた。地震(ないふる)ばかりのこの国では、それで事なきを得られたんだ。けれど、時が流れて、人々は昔ながらの習わしを忘れてしまう。誰もが家を堅くしたがって、屋根も壁も、瓦や石で造ることになるだろうね。そして、再びこの土がふるえたときには、多くの人が命を落すはずだ」
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