帰り道

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 大学のサークル帰り、みんなバラバラになってしまい、私と彼がふたり、駅へ向かって歩いていた。  私と彼はサークル仲間だ。  ただの友達だ。今のところ。  私は彼に好意を持っている。  絵に描いたような好青年。  恋愛には奥手。そうに違いない。  私もまた恋愛には奥手。  これは間違いない。  季節は冬。寒い。  特に今日は寒かった。  体の底からぶるぶる震えるような寒さ。  こんなときこそ手を繋げればそれだけで温かくなりそうだ。 「寒い…」  私は声に出して言ってみる。 「だね」  彼も寒そうにぼそっと言う。  私はもう意を決して言ってみた。 「ねえ、手繋いでいい?寒いの」  彼の右側を歩いていた私は、ポケットに突っ込んだままの彼の右手に左手を伸ばす。 「あ、ダメだよ」  彼は避けるような仕草をした。  一瞬私は断られたと思った。  けどすぐに思い出したんだ。  彼は趣味で草野球をやっていて、最近試合中に転んで右手のひらを骨折したんだ。  彼はごめんねみたいな顔をした。  いいのよ。だって左手は無事なんだから。  私は歩きながら彼の左側に移動した。  今まで遠いと思っていた駅がこんなに近く感じたのは初めてだった。                THE END
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