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沸騰する心をなんとか納め、顔を作って部屋を訪ねた。
窓向こうを眺める横顔。細い腕に繋がる管。膨らみの見つけられない腹部。灰色の空――反らしながら、順に目を留めた。
「シオン、ごめんね」
贖罪もできないのに、謝ってしまう。言葉だけじゃ意味がないのに、楽になりたくて謝ってしまう。この場面を通る度、今も謝罪を加えてしまう。
「………………私、どうしたらいいの」
「今は元気になることだけ考えてよ。他のことはそれから一緒に考えよう」
泣きながら組み上げた、綺麗な言葉をゆっくりと並べた。
本当は怖くてしかたがない。僕だって、どうしたらいいか分からない。けれど、最愛の人を支えられるのは僕だけだ。その一心で、心にも体にも芯を設けた。
二分くらい、シオンは黙っていた。
「…………分かった」
彼女が何を考えていたのかも、結局判明していない。けれど、了解が本心ではないことは確実だった。
時差で医師がやってきたとき、シオンは笑っていた。忘れかけていたほどに懐かしい笑顔で。
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