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「……ごめんね……ありがとう」  そう言った最愛の人――シオンの顔を、僕は今も霞みなく覚えている。雪の粒が舞う、ありふれた冬の景色も丸ごと。  全身を刺す温度も、痺れるほどの痛みも、何もかも薄まってしまった。なのに、嬉しそうなその微笑みだけは忘れられない。それから、穏やかすぎる死に顔も。    窓の外から、子供の声が聞こえた。複数いるらしく、何やら小さな歓喜を撒いている。  何事かと目を開き、ベッドから視線だけ放った。懐かしさ一つない、雪の舞を窓越しに見つける。耳を澄ませてやっと、声が初雪にはしゃいでいるのだと判明した。  真っ白な雪を眺めながら、妙な感覚を体に纏う。  今年はじめてなんて、やっぱり実感が湧かない。毎年のことながら変な気分だ。  とは言え、こうなった原因ははっきりしている。部屋の温度が操作されているからじゃない。外に出ていないからでもない。  記憶の中で繰り返し見ているからだ。彼女との日々の、最後のページと共に。    今日も今日とて、時間は有り余っている。だから恒例通り、シオンとの日々を辿るとしよう。
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