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「……実はお父さん、好きな人ができたんだ……」
ちょうど1年前、お父さんは真剣な表情でボクにそう言った。
お母さんが事故で亡くなった時、『これから男同士、隠し事をせず何でも話し合って生きていこう』と約束していたからだ。
「……お付き合い、してもいいかな?」
「……いいと思うよ」
ボクの答えに、お父さんの瞳がうれしそうに輝いた。
お母さんが亡くなってから、お父さんはボクのためにずっと頑張ってきた。そろそろ自分のために生きてもいいんじゃないかと思ったんだ。
ボクは息子としてではなく、男としてお父さんを応援してあげたかった。
でもまさか美沙さんのような人が来るとは思っていなかったんだよね。
おばあちゃんも初めて美沙さんに会った時、「悪い人じゃなさそうだけど、なんか複雑よね」と言っていた。
ボクの記憶にあるお母さんは、優しくて静かな感じだったし、写真の中のお母さんは目が大きくて鼻も高い。
でも美沙さんはおしゃべりで目が細くてなんだかのっぺりした感じ。
でもそれはしょうがないと思った。
美沙さんはお父さんと結婚したわけで、ボクの新しいお母さんになりに来たわけじゃない。
でも、美沙さんはボクのためにそれまでしていた仕事をやめて近くのファミレスでパートを始めた。
毎日学校から帰ると家にいる。
正直、ちょっとウザい。
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