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翌日、準備をして新幹線に乗り、実家に向かう。
ビルが立ち並ぶ車窓の景色が、だんだんと自然が多くなってくる。
川端康成の「雪国」の冒頭のように何個目かのトンネルを抜けると一面真っ白な世界が僕の目の中に飛び込んでくる。
春の日差しが、反射してとてもまぶしい。
しばらくして僕は、カーテンを閉めて、目をつぶり、音楽を聴き始めた。
駅には母が迎えに来てくれた。
ロータリーや周辺の道の雪はだいぶ無くなっている。
「忙しいのに悪かったわね」
と運転をする母に言われ、
「大丈夫」
と雪の残る街並みを見ながら、僕は答えた。
家に着き、車から降りると、
「ざっ」
と雪を踏み締める音がした。
でも、よく見ると所々土が見えている。
また、どこからか雪が溶けて、水の流れる音が聞こえる。
その時、僕は懐かしさを感じた。
何年か前まで、
(やっと雪の時期が終わった)
と思うと同時に、
(春が来た)
とうれしく感じたことだ。
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