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8.宅配ボックス
8.宅配ボックス
美子と中山刑事たちは冷たい地下駐輪場に足を踏み入れた。
古びた蛍光灯が青白い光を放ち、その薄暗い空間には静寂が漂っていた。
美子が宅配ボックスの前で立ち止まると、中山刑事が口を開いた。
「ここは最初に生活安全課が捜索しています」
「でも、奇跡が起きるとすれば、このボックスしかないわ」
美子はそう言うと、受付の液晶画面に手を伸ばした。
映し出されたのは亡くなった少女の顔だった。
美子と中山刑事は驚きの表情を浮かべた。
少女は優しそうな眼差しで何かを訴えかけているようだった。
美子はその瞳に引き込まれるように手を伸ばし、操られるように認証番号を入力した。
ボックスの扉がゆっくりと開き、その瞬間、美子と中山刑事は目を見開いた。
そこには横たわる幼児の姿があった。
美子は驚きながらも優しく幼児を抱き上げ、「純一ちゃん」と呼びかけた。
「おねえさんはだれ?……」
純一が目を覚まし、無邪気な声で尋ねた。
美子と中山刑事は目を交わし、その場に立ち尽くした。
「私の名前は青木美子と言います」
「おねえさん が かえっていいって」
純一は無邪気な表情を浮かべて答えると、周りには驚きと喜びの歓声が響き渡った。
美子は1週間も食事もできずに生きていたのは奇跡だと思った。少女は5年前に殺害され、壁の中に埋められて、復讐する時を待っていたのではないか。4歳の無垢な純一の言葉で少女は復活し、殺害された悲痛な思いが、純一への共感や保護欲で連れ去ったのかもしれない。復讐を果たし、無関係な純一を巻き込んでしまった良心の呵責から、この世に戻してくれたのだと思った。
美子は純一の両親に連絡を取った。
電話の向こうで感謝と涙に包まれた両親の声が響いた。
了
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