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成長
自分が生きていること。
少なくともこの体は、確かに生きて機能しているということ。
そのことが、たまらなく重くて―――不安で。
……眠りはいつしか夜に溶けるように消えて。
そんな日々を繰り返した三日目の朝に、俺はベッドから起きあがる事ができた。
自分の体を見下ろしてみる。
三日も眠っていたというのに肌はくすみの一つもない。むしろ艶があるぐらいだ。
心の症状と病状は一致しなかった、傍からみれば悩みなんて無さそうな健康体。
悩みなさそうでいいよね・・・って言われるたびに傷が付く、外的にじゃなくて内的に。
そんなもの、他人家族にも気づかれることは無くて。
俺は三年前に不老不死の薬の実験台にされて、むしろ俺はそれを望んで行ったわけだけれども、成功という失敗をしたのかも。
俺は17才体で不老不死の体を手に入れた。
みんなは羨むだけで、妬むものまでいた。完璧な体、副作用としては傷の完治が早い。
そんな体みんなが欲しがるのだけど、失ったのはみんなと共感できる心。
ずっと色物扱い・・・みんなと老いたかった。
置いていかれた気分だ。俺一人だけがずっと同じ時間。
こんな体でどうしろと。
なんでもあるのに何でも無い。何もない。
自分だけが取り残された気分だ。
有限の無限、儚い人生時間、それがエモーショナルだと俺は気がついた。
「シンイチさん・・・具合のほうはいかがですか?」
そういって話しかけてきたのは金髪の女の子だ。
いや、少女というべきだろうか。少女は背丈は俺と同じぐらい。俺の彼女だ。
「ああ・・・大丈夫だ。」
そういって、彼女の手をにぎる。
「また変なこと考えていたでしょ?」
「いや、何でも無いよ。何も考えていない。」
「つーか、五億年かー長いな」
「100万円あげるつってたけど、退屈だなー」
そう俺は金に目が眩んで5億年ボタンを押した一般人。不老不死の設定で100年妄想してた。
「次はどの設定でいこうかなー」
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