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黒部を抱えた啓二めがけて村民たちが野次を飛ばす。
「何が失敗だペテン師め!」
「依頼料は血税なんだぞ!」
特に村長など頭が噴火しそうなほど怒り狂っていた。
「この役立たずどもっ! 納得いく説明しろっ!」
「害霊と繋がったまんまで意識なくしちまったらさぁ、ソッコーで脳ミソをブッ壊されて死ぬか廃人になんの。一秒でも遅けりゃ相棒の命ヤバかったんで逃げました、とか説明しても素人にゃコトの重大性わかんねぇよな」
「なんつぅ態度じゃっ! ワシら被害者だぞっ!」
「出たねぇ被害者根性の酔っぱらいがよぉクソッタレ。テメェの弱さを免罪符にしてどこまでも増長しやがる」
啓二の瞳に殺意の火種が灯ってユラユラと揺らめく。
「こんな奴らァ平和のために死んだほうがいいよなァ」
「ユーたちケンカしないでおくれ父なる神もお嘆きサ」
割って入ったのは司祭服を纏う金髪碧眼の美少年だ。ウインクして「ちょりーす」などと古い挨拶をかます。
「このインチキ神父! また性懲りもなく!」
村長に襟元を引っ掴まれても少年は笑みを崩さない。
「ハハッ今日こそ娘さんに会わせていただきたくてネ」
「黙れキサマが居着いて以来おかしなこと続きだぞ! みんな物忘れひどくなるし娘だってあんなんなるし!」
「その誤解をときたくて参ったのですよミスター村長。異変なら悪魔の仕業だしミーはインチキ神父じゃない」
「祓い屋だっていつの間にか来ることになってたし! そもそも依頼した覚えもないってのにワケわからん!」
突き放された少年司祭が啓二に馴れ馴れしく近づく。
「ミーも協力しよう。お祓いなら多少の心得があるサ」
「うさんくせぇぞォ? アンタも祓い屋だってのか?」
訝しむ啓二に対して少年は自慢げに人差し指を振る。
「ノンノンノン! 人呼んで『星のエクソシスト』!」
「なっなにーっ? 『星のピンクの悪魔』だとーっ?」
「いやゲームのキャラじゃないし悪魔を祓う仕事だし」
「今のネタが外人さんに通じるってちょっと感動だな」
男どうし戯れていると小屋の戸が開く。
転がり出てきた村長の娘は簀巻きの筵を手足で貫き、胴体を起こすブリッジ体勢となって蜘蛛のように這う。
「よこせ器を」
娘の首が大蛇みたく伸びて啓二を襲う。
「アブナイ!」
「うおわっ!」
少年司祭に突き飛ばされた啓二は黒部を落とす。
好機とばかりに娘の首が黒部をさらってしまう。
「何しやがるテメェ!」
「ゴメンよ挽回する!」
少年は小瓶を取り出すと中身の液体を娘に浴びせた。
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