6人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
§
ことの真相を語った真理亜にクリスが歩み寄る。
「悪魔にカラダを委ねてる間もキミには意識があって、ぼくの話を聞いていたから聖水を拭き取ったんだね? あんなに過剰に反応したのはあとで悪魔と触れ合う時、濡れた手で傷つけてしまわないか恐れたからでしょ?」
「どうか許してください祓い屋の真辺さま!」
とつぜん真理亜が泣き崩れて啓二にすがりつく。
「悪魔たんをイジメないで見逃してあげて!」
「黒部はどうなる? 死ぬまで悪魔の入れ物か?」
啓二の質問に対して答えを用意していなかったのか、真理亜はたじろいで言いよどむと露骨に視線をそらす。
「そうなりますかしら」
「ざっけんじゃねェ話にならん」
広い聖堂に舌打ちの音がよく響く。
啓二でなく真理亜の舌打ちである。
「そぉアナタもワタクシにダメダメとおっしゃるのね。頭ごなしに否定して望みを潰すのね男っていつもそう」
髪を振り乱して熱り立つ様に清楚な面影は最早ない。
「結婚記念として大人どもに首でも吊らせたかったわ。でもアンタたちのせいで洗脳がとけて計画もご破産よ」
「被害者サマよ確かにアンタ可哀想だな同情してやる。テメェが加害者ってコトすら理解できねェおつむにな」
拳をボキゴキと鳴らして踏み出していく啓二の前に、十字架トンファーを両手に構えたクリスが立ち塞がる。
「彼女は魂を支払いすぎて正常な判断ができていない。憎むべきは彼女を騙して食い物にしてる悪魔だけだよ」
「テメェどっち側なんだ?」
「優しい人の味方でいたい」
「じゃあ薄情な俺の敵か?」
「キミもきっと優しい人だ」
「そういうのやめろキメェ」
突き放されたクリスは碧眼を潤ませて呻く。
「願え我が姫」
デビル黒部が囁いて真理亜の腰に手を回す。
「魂を捧げよ」
「駄目だよ!」
クリスの制止する声も真理亜には逆効果だ。
「こいつら殺して」
「聞き届けたり!」
デビル黒部が指を鳴らすとマリア像が動き出す。
真理亜は糸が切れた操り人形みたいに倒れ伏す。
「愛していますわ悪魔たん」
「貴様などタダの食料じゃ」
冷酷にも吐き捨てた悪魔に対してクリスが憤る。
「なんてひどい! 人の心がないのか!」
「悪魔だもーん! バーカバーカ死ね!」
対峙していた啓二とクリスは即座に身をひるがえす。その直後に鋭利な石の棘が伸びてきて男ふたりを襲う。
凶器の正体はマリア像が尖らせた乳房と股間だ。
背中合わせの啓二とクリスは抜群の連携を発揮して、片や炎刃で片やトンファーで卑猥な石の棘を迎え撃つ。
最初のコメントを投稿しよう!