2/3
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 §  ことの真相を語った真理亜にクリスが歩み寄る。 「悪魔にカラダを(ゆだ)ねてる間もキミには意識があって、ぼくの話を聞いていたから聖水を拭き取ったんだね? あんなに過剰に反応したのはあとで悪魔と触れ合う時、濡れた手で傷つけてしまわないか恐れたからでしょ?」 「どうか許してください祓い屋の真辺さま!」  とつぜん真理亜が泣き崩れて啓二にすがりつく。 「悪魔たんをイジメないで見逃してあげて!」 「黒部はどうなる? 死ぬまで悪魔の入れ物か?」  啓二の質問に対して答えを用意していなかったのか、真理亜はたじろいで言いよどむと露骨に視線をそらす。 「そうなりますかしら」 「ざっけんじゃねェ話にならん」  広い聖堂に舌打ちの音がよく響く。  啓二でなく真理亜の舌打ちである。 「そぉアナタもワタクシにダメダメとおっしゃるのね。頭ごなしに否定して望みを潰すのね男っていつもそう」  髪を振り乱して(いき)り立つ様に清楚(せいそ)な面影は最早(もはや)ない。 「結婚記念として大人どもに首でも吊らせたかったわ。でもアンタたちのせいで洗脳がとけて計画もご破産よ」 「被害者サマよ確かにアンタ可哀想だな同情してやる。テメェが加害者ってコトすら理解できねェおつむ(・・・)にな」  拳をボキゴキと鳴らして踏み出していく啓二の前に、十字架(クロス)トンファーを両手に構えたクリスが立ち塞がる。 「彼女は魂を支払いすぎて正常な判断ができていない。憎むべきは彼女を騙して食い物にしてる悪魔だけだよ」 「テメェどっち側(・・・・)なんだ?」 「優しい人の味方でいたい」 「じゃあ薄情な俺の敵か?」 「キミもきっと優しい人だ」 「そういうのやめろキメェ」  突き放されたクリスは碧眼を(うる)ませて呻く。 「願え我が姫」  デビル黒部が囁いて真理亜の腰に手を回す。 「(たま)を捧げよ」 「駄目(だめ)だよ!」  クリスの制止する声も真理亜には逆効果だ。 「こいつら殺して」 「聞き届けたり!」  デビル黒部が指を鳴らすとマリア像が動き出す。  真理亜は糸が切れた操り人形みたいに倒れ伏す。 「愛していますわ悪魔たん」 「貴様などタダの食料じゃ」  冷酷にも吐き捨てた悪魔に対してクリスが憤る。 「なんてひどい! 人の心がないのか!」 「悪魔だもーん! バーカバーカ死ね!」  対峙していた啓二とクリスは即座に身をひるがえす。その直後に鋭利な石の(トゲ)が伸びてきて男ふたりを襲う。  凶器の正体はマリア像が尖らせた乳房と股間だ。  背中合わせの啓二とクリスは抜群の連携を発揮して、片や炎刃(えんじん)で片やトンファーで卑猥(ひわい)な石の棘を迎え撃つ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!