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 乳房を焼き斬られて股間を叩き潰されたマリア像が、(あふ)れ出す血涙(けつるい)で濡れながら啓二めがけて突進していく。  ここで啓二は足元のツタ状植物に(つまず)いて隙をさらす。 「やべっ」 「ケイジっ!」  すんでのところで介入したクリスが啓二の盾となり、トンファーによるカウンターでマリア像を微塵(みじん)に砕く。 「クリスっ!」  トラックと相打つかのような反動によって吹っ飛び、壁にぶつかって床に転がるクリスを啓二が抱き起こす。 「何してんだ!? なんで俺なんか(かば)う!?」 「信じてほしくて……ぼくが味方だってこと」  血まみれの笑顔は啓二の記憶に走る傷を残酷に(えぐ)り、彼を救って消え去った愛しい女(久那土 美子)の最後の表情と重なる。 「ただの自己満足……迷惑なら忘れてほしい」 「こういうの()()りなんだよバカ野郎!!」  啓二が荒々しく吠えて弾かれるかのように立つ。 「俺を守って死にやがったらブッ殺すッ!!」 「ほらね? やっぱりキミは……やさしいヒトだ」  すっかり安心しきった様子のクリスが(まぶた)を閉ざす時、啓二はデビル黒部のもとへと向かって走り出していた。 「黒部ぇ! 聞いてっか!? 作戦に変更は()ぇー!」 「愚か(なり)! 貴様の声など! (こやつ)に届くものかよォ!」  嘲笑で返されてもなお啓二は叫ぶのをやめない。 「俺を信じろ相棒(バディ)! タイミングならお前に任せる!」 「なんの話じゃー? ええーい鬱陶(うっとー)しいです……ぞ?」  デビル黒部のメガネが(きら)めく。 「霊子(れいし)放流(リバース)!!」  光は闇の塊を外へと押し流す。 「うっそーん!!」  幼女の姿として顕現させられた悪魔たんがうろたえ、 「黒部 雀がブッコ抜くッ!!」  待ち構えていた啓二の腕が炎刃を横()ぎに振り払う。 「真辺 啓二が斬り祓うッ!!」 「よわよわビームソードなどくらうかよォッ!!」  旧式スクール水着みたいな衣装を纏う幼女の悪魔は、大きく()()って炎刃攻撃をかわすと同時に跳躍する。背中に(ゆう)すコウモリの羽を一生懸命バタつかせながら、ステンドグラスを突き破って夜空へと飛び去っていく。 「さらばじゃ! ざこざこお兄ちゃんたちィッ!」  捨てゼリフとともに振り向くなり悪魔は目を見開く。 「げ!!」 「炎刃翔(ジェット)」  ジッポライターの火炎噴射による推進力で飛翔して、悪魔のすぐ背後まで瞬時に追いついていた啓二が笑う。 「おイタちゃんへのお(きゅう)にしちゃあ熱すぎかァッ!?」 「もしかして『わからせ』ですかぁーーーーっっ!?」  (おつ)級害霊『メスガキ悪魔たん』はロクに抵抗できず、ちっちゃなボディを真っ二つに斬り裂かれて爆散した。
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